給料の安い国、ニッポン(2021−10−29)
ボクは仕事を辞めて3年半になる。第3の仕事でフィリピンにも行ったが様々な理由により予定より短い期間で日本に帰ってきた。一番大きな理由は長くいれば間違いなく健康を損なう事であった。
健康を犠牲にして第3の仕事をやる気はボクには全くなかった。

その後ある方からの紹介があって公的な機関で中小企業相手の仕事をやったが、あまりのお役所仕事のいい加減さに愛想が尽き、早々に辞めさせてもらった。
そこは退職した大企業の部課長の小遣い稼ぎの巣窟になっていた。

今でもこういう縁からいろんな人に会うので話に困らないよう、そして頭が錆び付かないように、ある経済(週刊)誌を年間契約で購読している。

大した効果はないと思うが毎週郵便で送られてくるのでパラパラと見る、というか眺める。
ここだけはちょっと気になる、といいう事でページを破って残すこともある。でもそれらをもう一度見る、というのは結局は希だ。

世の中の本質を知る、見るには経済、端的に言うと金(経済)で見るのが一番、というのを現役時代に一緒の職場にいたある人が言っていたが、その後中小の経営者などと幅広く付き合うようになってこれは実に正しいと思うようになった。

ボクが付き合った中小の経営者は、物事をお金に変換してそれを測定する自分なりの物差しをきちんと持っていた。そしてこの測定の回路がいつもセカセカ回っていた。

世の中は芸術も、宗教でさえも経済原理で考えた方がわかりやすい部分がある、とボクは思っている。

アメリカの年間平均賃金は6万9千ドル(約760万円)、これは30年前に比べて48%増加しているという。これに対して日本は3万8千ドル(約430万円)で同じ30年間で4%しか増えてない。
原因は政府が最近まで世界一高い法人税を課し、円高を放置し、デフレ経済を容認してきた結果である。

この30年間で企業は生産拠点を海外に移し、産業の空洞化を作り、雇用をなくし、結果として働く者から購買力を奪った。賃金は上がらず、失業者が増え、消費は衰退、商店街はシャッター通り、、、。

主として衰退したのは第2次産業(製造業)が中心だった。

「日本では断腸の思いで日本人従業員の首を切って、工場をアメリカに持って来て、アメリカ人をかき集め会社を経営している。これでいいのか。これじゃ将来日本は絶対におかしくなりますよ。

これは今から20年ちょっと前にボクがアメリカにいた頃、ある取引先の役員さんが言っていた。

一方で日本は第3次(サービス)産業が増えた。サービス関連業は一部を除き、単純で付加価値が低い仕事が多い。つまり給料の安い仕事の従事者が増えた。

同じ頃、日本人は肉体的に負荷の大きい仕事を嫌がる、と言うか子どもの言うような理由をつけてコツコツ仕事をすることを忌避する人が増え、経営者は日本人の代わりにガイジン労働者に頼るようになった。外国人技能実習制度とかいう、ものスゴく胡散臭い仕組みまで作った。

結果、日本には労働意欲のない、未就業の日本人が200万人(気が向いた時だけ仕事をする連中を含む)もいる国になった。産業の空洞化と労働意欲の低下が結局は日本人の給料が上がらなくなった大きな原因だと思っている。
ボクの考え、単純すぎか?

今度の選挙ではボクの選挙区からは自民党新人と当選8回の立民党の2人が立候補している。珍しく共産党が立候補していないが、これは立民と共産党の話し合いの結果らしい。
”立憲共産党”と言われる所以である。

今回の選挙ではこの立憲共産党は「分配、分配」とバラマキについて口角泡を飛ばしている。バラマキをやるには財源が必要である。
彼等は「金持ちから巻き上げる、有価証券売買益から巻き上げる、企業増税で巻き上げる」、としている。
この3つが金のなる木ということらしい。

しかし、、、日本に突出した金持ちは殆どいない。彼等は所得1000万円以上をターゲットにしているらしいがこれは全体の13%、そもそも所得1000万円は金持ちか?という疑問がある。

G7先進7カ国で「所得9万ドルは高所得者である」と言えば、「??」になるだろう。これはミドル以外の何物でもない。

彼等の言うようにそこから税金を巻き上げるとなると1憶総貧乏社会の出現だ。
「バラマキ」で豊かになれる訳がない。
ボクは思う。やるべきは”成長戦略”ではないか、と。

生産・分配・消費が一致する"GDP三面等価の法則"というのがある。
要するに生産(GDP)が増えないことには分配(給料)も増えないし、消費も増えない。
活発な第1次〜第3次産業なくして給料アップはない。

自民党が「成長と分配」と言っているが、この原理原則の事を言っていると思っている。小学生でもわかる当たり前の理屈であるがマスコミはこれを話題にしない。

ボクは自民党に思い入れは全くない。
成長と分配"とは、いい卵がたくさん欲しければ健康な鶏をたくさん育てること、と言っていると解釈、これに賛成しているだけだ。
立憲共産党は鶏が太っているとみなし、”鶏そのものを食べてしまおうとしている”ようにボクには見える。

何でみんなこれを無視するのだろう。ボクは不思議でならない。まあボクは退職者でもあるので高見の見物と決め込むしかないのだが、、、。