久米島での過ごし方(2021−12−08)
久米島では毎日、文字どおりブラブラ過ごす。これをやらなくてはいけない、あれをやらなくてはいけない、というものは実質的に全くない。あったとしてもそんな事は考えない。しかし過ごし方の一応のペースというのはある。

朝は6時半頃に起きる。まだ真っ暗であるが、窓を開けるとひんやりした爽やかな空気が入ってくる。朝食は7時から、きっかりの時間に行く事にしている。

レストランの係にこの前に来た時は会えなかったTさんがおり、久しぶりに話をした。

Tさんはそれまでは夕食の係と21:00からオープンするバーでバーデンダーをやっていた。
昨年の暮れに来た時は宿泊客激減によりレストランの夕食は営業停止、バーもクローズ、Aさんを見掛ける事ががなかったのだった。

Aさんは59才、ボクのイメージする典型的な久米島の人、という感じである。バー・カウンターで一杯やりながら久米島の事、沖縄の事などについていろいろ教えてもらった。

朝食であるがボクは本当にゆっくりと頂く。食べ終わってコーヒーを飲み終わると8時頃になっている。つまり朝食に1時間を掛けるのである。実に贅沢である。

席は一番奥に座って、それとはなしに客の観察をさせて頂く。これはボクの趣味(?)のひとつかも知れない。

おっ、白人の中年男と日本人妻らしきカップルがいる。白人はアメリカ人か。微かにアメリカ英語が聞こえる。歳は結構老けて見えるが実際は45才以下だろう。奥さんは日本人なので歳の推測は大きくは狂わない、、、と思う。
白人はパンとスクランブルエッグを食っている、なんで味噌汁と卵のぶっかけ飯と納豆を食わないんだ?

奥さんはご飯を目を細めて旨そうに食べている。白人はそれを不思議そうに見ている、、、こんな茶色のスープのどこが旨いんだ?というような顔してる、、、とか。ま、こんな具合である。

朝食が終わると一服の後、浜辺を散歩したりする。浜辺はホテルと同じ名前の"イーフビーチ"、じゃなくてホテルがビーチの名前を使っている、というのが正しい。

イーフビーチは”日本の渚百選”に入るきれいなビーチだそうで、確かにきれいだ。でも今回はちょっと違う。それは1ヶ月ほど前に小笠原近海で海底噴火があり、その軽石が流れ着いて真っ白な浜に黒い帯を作っているのだ。きれいな女性の腕に蛇の入れ墨を入れたような感じで見るに堪えない。

浜は1kmくらいあるがそれをゆっくりと歩く。
おっ、椰子の実が流れ着いているではないか、どこから来たのだろう、黒潮に乗ってフリピン辺りからか?

フィリピンにいた頃は会社に日本人のお客さんが来ると椰子のジュースを飲ましていた。ボクも一度飲んでみたが何とも言えない爽やかな味だったな〜、、、。

浜に流れ着いた椰子の実一個を見てあれこれ思い出したりするのも楽しいものだ。

長いビーチには人が殆どいない。ビーチで一人、座禅を組んで瞑想している若者を見掛けたことがあった。
500mも歩いた頃一人の青年が浜にやってきたので声を掛けてみた。
横浜から来て本島からはフェリーで来たと言っていた。歳は30才だった。

更に歩く。ちょっとした展望台があるのでそれに上がってみた。 すると真っ黒に焼けたオジさんも上がってきた。声を掛けると東京からダイビングで来たそうだ。58才。

「もう会社を辞めたいですね。」。そりゃそうだろう、こんな島に来たら誰でも思う。何やってるのか知らんが、都内であくせく働くなんてできなくなる、、、よ〜くわかるよ。

そんな感じでビーチを散歩するのだ。いいね〜、本当に。

ホテルに帰って部屋で再度一服。ボクは久米島ではレンタカーを借りてある。久米島は車がないとどこにも行けない。ボクは車で特に行くアテもなくトロトロと運転をするのが好きだ。
島内の道路はよく整備され、車は少ない。前にも後ろにも全く車が視界に入らないという事はよくある。

久米島の人口は8000人を割って、間もなく7000人を割るんじゃないか。島には集落が4つあるがその中の2つは間口3間の雑貨屋が一つくらいあるだけの本当に小さな集落だ。

メインの集落は2つで、ボクの泊まっているホテル付近の集落、それにフェリーが入る港付近の集落である。

この2つにはスーパーもあるし、コンビニもホテル近くに一軒だけある。それ以外は言ってみればサトウキビ畑とパイナップル畑だけ、という島だ。

そんな島ではあるが島の産業は農業と観光という事になっている。

”観光”と言うからには、見る場所は一応あるにはあるがゆっくり回っても1日半もあれば全部回れる。何があるかと言えば碧い海と青い空、それに白い雲だ。

それだけ?と言う人は米島に来ない方がいい。
海と空と雲にロマンを感じない人は久米島に来てもがっかりするだけになる。本当にそう思う。

ボクはこの3つを求めて島内をダイハツの軽自動車でトロトロと走るのだ。時間によって太陽の光の加減で景色は大きく異なる。潮の満引きによって海の色は全く違う。

ボクは気に入った場所が4カ所ほどあって、そこで景色を見ながらJAのスーパで買ったお弁当を頂く。最高だね。

13:45分頃、再びホテルに帰って来る。風呂に入るためだ。このホテルには海洋深層水の大浴場があり、太平洋を眺めながらの風呂は最高である。
この風呂に入るだけで久米島に来る価値はあると思っている。

風呂には14:00から入れるがこの時間に行くと他の人は誰もいない。つまり貸し切り、という事になる。大浴場を貸し切ってゆっくりと湯に入る。

ボクは温泉とかで湯を浴びるのがいいな〜、と感じるようになったのは60才を過ぎてからだ。

それまで風呂というのは"汗を流し、身体をきれいにするための施設"という概念しかなく、湯に浸かって"気持をほぐす"などというのは怠惰につながる、若い者がやるもんじゃない!、という偏見を持っていた。

だからみんなが温泉に行こう、温泉はいいよ〜、というのには乗り気になれなかった。これは本当だ。

最初に久米島に来たのは10年前であるが、その時「いいお風呂がある!最高よ!入ってきたら?」、というカミさんを無視してボクは部屋の風呂に入ったのを覚えている。

いつから風呂に入る贅沢を覚えたのだろう。多分きっかけはあれだな、というのがあるが、湯浴みを楽しむのは精神的に弛緩する状態が心地よいという意識がないとダメだというのがやっとわかった。
現役の時はそういう気持になれない、というかボクは余裕がなかったのだね、きっと。

結局は仕事を辞めてその気持がわかるようになったのだ。ボクは奥手か?。

風呂から上がると部屋に帰ってPCと本を持ってフロント横の喫茶コーナーに陣取る。ここも普通誰もいない。気に入った席があってボクはいつもそこに座る。眺めのバランスがいいのだ、そこは。

で、その横に土産物売り場ががあるので、そこの冷蔵庫から勝手にビールを取り出してフロントに持っていく。土産物コーナーには普段は誰もいないのだ。
フロントにも誰もいない事があるので、その時は係をベルで呼び出す。ビールは部屋をエコにすると無料券(1本分)をくれるので、これを渡すだけである。

フロントの女の子と話をする間柄になってボクがビールを2本飲むと、「今日は2本ですか〜、乗ってますね。」とかボクを手玉に取ろうとする。

今回は驚いた事にこの喫茶コーナーの横(今は閉店しているバー)に無料(!)の泡盛のカクテルが3種類(コーヒー割とフルーツ割2種類)を置いた事だ。
多分期間限定の、「泡盛を飲もう!!」キャンペーンだとは思うけどね。

ボクは早速3種類とも飲んでみたね。全部美味しかったけど結構酔っ払った。だって全部アルコール30度のストレートだからね。

喫茶の隅っこでボクはPCでメールなどを書いたり、主に読書をやったりで最低2時間はここで過ごす。

喫茶コーナーの周りには今回もずっと誰もいなかった。本当に静まりかえっていた。大袈裟に言えば気味が悪いくらい静かだった。横方向20mくらいにあるフロントを見ると係の女の子がヒマそうにしている。外を見てもプールサイド、芝生の上にも誰もいない。

湯に入って身体はサラサラで気分爽快、ビールをチビチビその後泡盛チビチビ、碧い海と空を眺めながら読書をする。
久米島では昼間はこんな過ごし方だね。本当に最高だね。