合唱の国、日本:タイ米マズい合唱(2018−08−10) |
先週の土曜日、会社のOB3人とメキシコレストランで一杯やった。 みんな同じような年令である。その中のひとり、Kさんは私より1才上で、25才くらいの時から海外生産に関する仕事をやっていた。 駐在もインドネシア、マレーシア、タイ国の経験があり合計すると私のオハイオと同じくらいの年数になる。 私がオハイオからタイ国に行った時、彼はアユタヤの工場にいた。 夕食が終わってパ○ポンに繰り出す時、彼はIDカードぶら下げて作業服のまま通りを歩き、店に案内してくれた。 「松竹梅どれにしますか?」 私は選ぶのが面倒なので、何日かに分けて全部行ってみた。みんな最後は同じで、値段が違うだけだった。 そのKさんが駐在していたタイ国、私が行った7年くらい前に、"平成の米騒動、タイ米事件"というのが日本であった。 これは今では30才以上でないと記憶にない事件である。 その年は気候不順で記録的な米の不作となり、それが原因で米不足が噂され、業者の米の買い占め、売り惜しみが全国的に起きて店屋から米が消えてしまったのである。 慌てた政府は対策として米の緊急輸入を外国から行おうとしたが、日本米に近いアメリカ産・中国産は必要量が揃わず、タイ国からの輸入となった。 政府の対策は買い占め業者、売り惜しみ業者の頭を叩くのが初動だと思うが、ナゼかこれはやらなかった。 かくて各家庭はべらぼうに高くなった日本米を探してきて食べるか、タイ米を食べるかの選択を迫られたのである。 と言うか、タイ米を食べざるを得なくなったのである。 タイ米はインディカ米なので、我々が普段食べるジャポニカ米とは違う。 臭い、パラパラしてる、とにかくマズい、etc。まるで食い物ではない、というような評判だった。 日本人には"ガイマイ(外米)"に対する如何ともし難い先入観がある。 かつての南京米事件の酷さがDNAに組み込まれているのか。(私は南京米の事は話だけで、実際を知る年令ではない) |
私は当時、"タイ米マズい合唱”に疑問を感じていた。 私はそれまでの海外出張であちこちのレストランで細長い米は一杯食べてきたが、騒ぐ程の違和感はなかった。 ご飯は新米のササニシキでなきゃイカンとか、茶碗に盛ったときに艶々してなきゃイカンとか、そういう事には殆どこだわりがない方だったし、今もそうだ。 会社の食堂でも、「何か最近細長い米が混じってますよね」、とかいう声が聞こえるようになった。 余りの騒ぎに心配した駐日タイ大使の奥さんがテレビ出演して、タイ米のおいしい食べ方の紹介までしてくれた。炒飯のようなもの、具を作ってそれをご飯の上に置く、というような内容だったと記憶する。 私はタイ米でワカメの味噌汁の朝ご飯も平気だし、カレーライスに至ってはタイ米の方がおいしいと感じた。 会社では休憩時にタイ米の話がよく出たが多くの者が、「マズい、臭い」、と言い、"キライ派"だった。 テレビなどの街頭インタビューも"食えない派"が多かった。 ところが、である。 NHKにしてはなかなか面白い実験をやってくれたのである。 それは炊きたての日本米と、炊きたてのタイ米でおにぎりを作り、街頭で目隠しをして食わせ、どっちの米で作ったおにぎりか当てるという実験であった。 結果は日本米をタイ米と言ってみたり、タイ米のおにぎりを日本米だと言ってみたり、殆どが当たらなかった。 暖かい飯だと差が出ないのである。 これ以来私はインディカ米を、更に自信を持って食えるようになった。 ここで話を戻す。 私の友人Kさんが当時言ったのは、タイ政府が日本の要請に応じ備蓄米をごっそり輸出したため、今度はタイ国で米の値段が上がってタイ人が非常に困った、という事であった。 日本での不届きな商売人の買い占めと売り惜しみにより、輸出をしてくれたタイ国の人々を苦しめたのである。 日本人はこの事実を殆ど知らない。 政府が輸入したタイ米は大量に残り、一部は動物のエサになり、そして殆どが捨てられた。米が捨てられたニュースもタイ国に伝わったが日本人は無関心だった。 金出して買った米だから、捨てようが何をしてもいいという事なのか。 "タイ米マズい合唱”、今でも同じ事が起きれば、もっと大合唱が起きるだろう。 一体日本人とは何様なのか。いつか天罰が下る。 みんなは何でも食えるボクを見習って欲しい、、、。 |