短波との出会い(2018年4月23日) |
私はゲルマ・ラジオはどういうものか理解ができたもののイヤホーンから聞こえてくる音はあまりにも小さく、とても長時間聞くことができる、というものではありませんでした。 何とかもっと大きな音で聞こえないか、次に手がけたのがトランジスタを1個使った”1石ラジオ”でした。 1石ラジオにはレスレックス回路という一つのトランジスタで高周波増幅と低周波増幅の2つの働きをさせる回路があり、感度もいいとなっていました。 しかしこれは部品の数も多く複雑(と、その時は思った)なので低周波増幅1段構成をものを作ることにしました。 同調回路はバリコンとコイルではなく、ミュー同調回路を使いました。小学校5年生でしたが、この頃になると断片的でしたが様々な知識がついてきた時期だったように記憶しています。 同調回路はコイルを一定にしてコンデンサを変化させる、またはコンデンサーを一定にしてコイルを変化させる方法があり、ミュー同調回路というのは後者の方法でした。 1石ラジオは苦心の末出来上がりました。 1石ラジオはゲルマラジオとは比較にならない大きな音がしました。特に1050KCのCBC(中部日本放送)は一番大きな音で聞こえ、夢中で音楽を聴きました。 これを作った頃、私は既に短波放送の存在を知っており東京からの電波が全国で聞こえる、それだけではなく外国の放送も聞こえるという知識を得ていました。夢のような話でしたが。 ところが、、、その短波放送がこの1石ラジオで簡単に聞ける事を知ったのです。それはミュー同調回路に付いているコンデンサー(確か150pf)を外すだけ、と雑誌に書いてありました。 早速やってみました。 |
小学校6年生になったばかりの頃(昭和37年:1962年)だと思います。 私はコンデンサーを外して夜になるのを待ちました。短波放送は夜になると良く聞こえると雑誌には書いてあったからです。 聞こえました!NSB(日本短波放送)とピロピロ・ジージーという不思議な電波が聞こえました。 これは後で考えると津測候所(後の津地方気象台)の写真電送の電波ではないかと思います。 3.6MC付近でその後何十年も受信できておりましたので間違いないと思います。 津測候所は小学校の横ですから家から6〜700mしか離れていませんでした。 アンテナが幾つも張り巡らされていました。 すると、、、今度は普通の人の話す声が聞こえてくるではありませんか。 しゃべっているのは日本人らしいのですがカナダとかアメリカとか言ってます。もう不思議でたまりませんでした。 これがアマチュア無線の電波を聞いた最初でした。 これはローカルのアマチュア無線家達でした。カナダとかアメリカはフォネティックス・コードである事はその後かなり経ってから知りました。 当時聞こえたのは一体誰だったのか、JA2AH,JA2CKY,JA2CEF,JA2CQZ、JA2CVWというコールサインが今でも覚えていますが、その後に聞いたのとゴッチャになっているかも知れません。 これらのOMさん達は全部自宅から1.5km以内でした。周波数はミュー同調ラジオの構造からすると3.5MCでした。(当時はまだ周波数の概念はあまりなかったと思います) そしてこの頃はSSさんという私より2才年上の先輩と一緒にラジオ作りに熱中しておりました。 この方とは同じ時期にラジオ作りを始めたのですが、年上でありいろいろと相談をする事ができました。 最後に会ったのが私が中学校3年生、SSさんが高専2年生でした。 その後ぱったり会わなくなり、私が35才頃SSさんを探そうとその住所に行ったのですが、環境が一変しており探すことができませんでした。 その後どういう人生を送られたのか、何とか会いたい人のひとりです。 このミュー同調の1石ラジオ、0−V−1を作って本格的に短波放送を受信するまでその後半年以上、3.5MCのローカルのOMさんのQSOを聞くのに利用されました。 |
1石ラジオで聞き始めた短波。でもそれは所詮ゲルマラジオに毛の生えたものでした。何とかもう少し良く聞こえないものかと雑誌を見ているとNSBチューナーというのが目に入りました。これを普通のスーパー・ラジオに付けるとその名の通りNSB(日本短波放送)が受信できる、という魔法のような装置でした。 作り方は確か、”初歩のラジオ”の記事で作ったと思います。 ナゼ作る気になったかというとコイル2個とコンデンサー1個という簡単な構造で短波が聞けるというからでした。 実はNSBチューナーは既に父親が何年も前に小型の5球スーパーラジオに付けて使っていました。父は東京証券取引所の実況を聞いていました。 しかし、いつの間にかそれがなくなってSONYの2バンドラジオに変わっていたと記憶しています。 この時苦労して作ったNSBチューナー、あまりうまく作動しませんでした。NSBが聞こえて、ローカルのアマチュア局が聞こえたと思いますがとにかく不安定でした。 多分コイルなどをしっかりしたケースに組み込んでいなかったからだと思います。 それに利用したラジオは立派な東芝製の6球ラジオで余り使っていなかったとはいうものの、中をゴチャゴチャいじったり自分の部屋に持ち込んだりはできませんでした。 ラジオは応接間にデンと置いてあり、裏蓋をこっそり開けて取り付けた程度だったと思います。 またまともなアンテナを取り付けていなかったのではないかと思います。 最近このNSBチューナーを自作、再現した方がいます。受信範囲は2MHZ〜5MHZくらいで、うまく作動したそうです。 実は、、、この56年前に作ったNSBチューナーのコイル、まだ私の手元に残っているのです。自分が小学校6年生の時に巻いたコイル、きれいにエナメル線で巻かれています。 これにコンデンサーが1個あればNSBチューナーは完成です。 問題は取り付ける側の中波の真空管ラジオがない事です。 そこでNSBチューナーを再現するために中波のラジオ作りをやろうと部品を集めました。ちょっと馬鹿げているかも知れませんが、趣味とはそういうものだろうと、、、、。 |