無線機の自作を認めない法律(2018年7月15日)
私がハムを始めた頃は無線機を自作するのは普通でした。
アマチュア無線をやるには先ず無線機を作るところから始まるのでした。
というよりラジオを作っているうちに、電波を受信するだけではなく、自分でも電波を出してみたくなってハムを始めるというパターンが殆どだったと思います。

無線で話がしたい、という理由だけでハムを始めた、という人はマイナーだったと記憶しています。
その後無線機は自分で作るものではなく、買ってくるものという世の中になり、"話をしたい"、というだけの動機でハムをはじめる人が殆どになってしまいました。

ここ20年くらいで携帯電話・スマートフォン・PCなどが小学生にまでに普及、その影響により現在ではハムは非常にマイナーな趣味になってしまいました。

ところが私の世代以上の古いハムは、未だに無線機を作るのを趣味にしている方が結構みえます。
ハムは通信(コミニケーション)ではなく、無線機の自作が原点と考えている人達です。
私もその中のひとりです。
私が無線機の自作をやる理由は大きくは3つです。

1番目はものつくりの過程が楽しい点です。
回路を考えたり、安く・簡単に作るための工夫、組立て、配線、調整とかそういうレベルの作業、また資料を集めたり調べたりという作業も楽しいのです。

2番目はノスタルジーの世界に浸れることです。
少年の頃やろうと思っていたが、お金もなく知識もなかったので夢で終わっていた事、それが今は少し小遣いもあるし時間もあるので、夢だった事を実現させる、という世界です。

3番目は昔を偲ぶ、というロマンです。私が製作する無線機は80年以上前に確立された技術を使ったものだけです。
その頃の技術と部品で作られた無線機が、今でも実用に供することを実験する、というロマです。
この3つが私が無線機の自作を今でもやっている理由です。

こういう自作の無線機は今は手許に残っているものは数台しかなく、その中でも大分前に作ったシンプルな送信機は大切に保管しています。
これは昭和8年(1933年)に開発された真空管(UZ42)と昭和14年(1939年)に開発された真空管(6ZP1)の2本を使った短波帯の電信送信機です。
実際に使った2本の真空管は、恐らく昭和20年代半ばに作られたものだと思いますが、それぞれ立派に作動します。

かつてトランジスターとかICが真空管にとって代わった時、真空管は世の中から消えてしまうので、真空管で何かを作るなんてナンセンスとか言われた事があります。

実はこれこそナンセンスな考え方で、真空管は1930年頃に開発されたものでもまだ大量に残っています。
戦後作られた真空管に至っては、一部は恐らく22世紀まで残るのは間違いないと思います。

ですから真空管は今でも簡単に安く手に入ります。
それよりICとかの方がちょっと古いタイプになると手に入りません。1980年代のICを修理用に欲しいと思っても手に入らないものが一杯あります。

そんな古い真空を使った簡単な2球送信機、これにダイポールアンテナを接続して電波を出したところ、日本全国と簡単に交信できました。

韓国とか極東ロシアにも電波は飛んでいきました。(それぞれ鹿児島・北海道より距離は近い)
この送信機は出そうと思えば6〜7Wくらいの出力が出せるのですが、私はその半分くらいで使っていました。

また自分で作った送信機で非常に簡単な構成ですから、調子が悪くなっても直ぐに修理できます。
買ってきた無線機はそうはいきません。修理はメーカーのサービスに出すしかなく、某メーカーのように修理を何だかんだ言って嫌がり、代わりに新品の購入を勧めたりするところもあります。

みんなが何十万円もする高価な無線機を使っている中、こういう自作送信機で電波を出して交信するのは何だか愉快な気持になったものです。

しかし、です。
最近、電波の不要輻射(目的の周波数以外に出してしまう微弱な電波)の規制がうんと厳しくなり、これに適合しない送信機での運用は許可しないという法律が施行されました。

これは簡単に言うと、ある時期以降に日本メーカーで作られた送信機以外は使うな、という法律です。
ある時期以降の送信機は不要輻射の評価・判定をしているのでOK,それ以前は評価をしていないので使えない、そういう理屈です。

評価・判定は総務省の外郭団体がやっています。
ですからキットで組み立てた送信機、私のように自分で作った送信機、外国の送信機は評価の対象外なので最初から論外、となっています。

これは、実態をあまりにも無視しているという事で、後でいろいろと抜け道が作られました。
例えばその外郭団体に4800円を払って、使いたい送信機の審査をしてもらい、合格すれば使えるとかです。

審査は申請用紙に書かれた内容を職員がON/NGを判定するという方法です。
要するに古い無線機を使えなく(使いにくく)し、新しい無線機の購買需要を作る、という目的が見え見えの法律です。

「自作送信機?そんなもの使うな、新しい日本メーカー製の送信機を買えよ。」
「外国製送信機?日本製の新しいのを買えよ。」

この法律ははっきりこう言ってます。

実態として、古い送信機でも電波の不要輻射で、テレビとか電話に妨害を与えたとかは、ここ30年くらいは全くと言っていいほどありません。

理由は、テレビとか電話が妨害電波を受けにくくなったのと、送信機の不要輻射が極めて微少になったからです。
私が作ったような自作送信機は、送信出力自体が非常に小さいので不要輻射も小さく、問題になりません。
政府と業界の癒着がここまではっきりと見える法律も珍しいです。(車の車検制度並みです)

何でも反対してくれる、民主立憲何とか党の皆さん、出番ですよ〜、、、。