キリがない追求(2023年02月14日)
先日ある先輩から、オーディオ装置の改良についてのメールが来た。
「いい音を楽しむためにいろいろやっているが、その中でPCとDACを繋ぐケーブルを高級品に換えたら、音質が大きく改善された。」と書いてあった。

アンプのコンデンサーを、ある種のものに交換したら音が良くなった、ケーブル端子を金メッキに換えたら音に深みが出た、とかボクら高周波マニア(アマチュア無線家)の観点からでは、単純に「そうですか。」と言えない事を真剣にやっている、低周波マニア(オーディオマニア)がいるのをボクは知っている。

オーディオ機器は純粋な電子機器であり、オーディオマニアのやっている事の中には、測定器上では電気的性能に変化はないはずの変更でも"音が変わる"という事で、大変な努力(お金)を払っている人がいる。

こういう世界にのめり込んでいる人達を、"オーディオ教信者"と呼ぶのもボクも知っている。

もっとも電気的特性に表れない(現れにくい)要素による音の変化というのが実際にはあって、”人間の耳は、それを感じる事ができる”という見解を、アマチュアではなくプロから聞いた事がある。

メールをくれたボクの先輩は、論理の連続性を重視する人で信者でもないので、ボクは先輩がメールで伝えて来た事を、ちょっとだけ真剣に考えてみた。
PCとDACは、USB−A/Bケーブルで接続されている。
USBの信号ラインには多くのノイズが乗っているのは周知である。このノイズが、信号ライン上のデジタル信号に影響を与えて信号が劣化、結果として音質を下げている可能性があるのではないか、と。

USBケーブル内には信号ラインが2本と、5Vの電源ライン2本の合計4本のライン入っている。信号ライン上のデジタル信号のノイズは、元々信号に含まれているノイズと、横を走る電源ラインから誘導で入ってくるノイズ、それに様々な周囲の機器から誘導混入される3種類がある。

つまり高級ケーブルとは、USBケーブル上で誘導・混入してくるノイズを防ぐために、ケーブル内の4本のラインを厳重にシールドしてあるケーブルなのだ。構造の概要を示すあまり鮮明ではない図を見て、高級ケーブルとは一体なんぞや、ボクの所見である。

更に大抵の高級ケーブルはコネクターの接点、その他各部が金メッキである。所詮ケーブルなので、結局はそういう見える違いをつけて、商品としての付加価値を上げている、と言うことのようだ

ボクは書斎に超ミニサイズのデスクトップ・オーディオ(という程ではありませんが)をセッティングしている。
”PC(DELL)⇒DAC(DACSQ5J)⇒AMP(SMSL−SE98E)⇒SP(KENWOOD:LS−NA7)"という構成である。
音源はPCのSSDにコピーされたCD300枚と、ネットの音楽サービスである。

このオーディオシステムは、数年来使っているが、音としては低音が少しこもった、全体としてドロッとした音が気になっていた。

先輩が交換したのは「PC⇒DAC」間のケーブルである。ボクも何らかの改善(変化)を期待して、ケーブルのアップグレードにトライしてみる事にした。
ボクのシステムを正確に言うと、PCとDAC間にはUSB/HUBが入っている。PCへの接続機器が多くて、PCのUSBポートが足りないからだ。

HUBは時分割の装置であり、信号の伝送に影響を与える可能性が考えられるので、先輩は使ってないという。
そこでボクもDACをHUB経由から、PCのUSBポートダイレクト接続に変更したた。

ケーブルは、手持ちのUSB・A/Bケーブルを何本か引っ張り出したら、エレコムのAV/音楽伝送用というのが出てきた。ネットでユーザー評価を調べると、評判が大変よろしい。

という事はこれはシールド構造になっているんだな、しかしそれにしては線が細いな、、、と思いつつ取り敢えず交換、オールディーズ、JAZZ、クラッシック、歌謡曲の中の聞き慣れている曲を聴いてみた。
慎重に何度も聞き比べたが、特に違いはわからない。

音の変化はない、という結果からボクは考えた。
ひとつはボクの環境は元々USBライン上のノイズが少なかったので効果は現れなかった、もうひとつはエレコムのケーブルはシールド構造になっていないのではないか、という点だ。やはり線が細すぎるからだ。

何だかモヤモヤしているので、ボクは先輩が買ったのと同じ”オヤイデ電気”のケーブルを買うことにした。今までのボクなら4756円も払ってUSBケーブルを買うなど、有り得ないのだが先輩の事例があるし、疑問を持ち出すとそれを解決しないと気が済まない性分。

それにネットで調べると、「ケーブを馬鹿にしてはイケナイ。」みたいなオーディオファンのサイトが幾つも見つかった、というのもあった。

実はケーブルについてネット検索しているうちに、ボクが使っているDACのSQ5Jの「OPアンプ(ICチップ)を交換すると音質が大きく改善される」、というマニアのサイトにぶち当たったのだ。

オリジナルで内蔵されているのはOPA2604AP,これをOPA627AUに交換すると改善される、とある。OPアンプはAMAZONで調べると直ぐに見つかった。3260円。
一瞬迷ったが、えい、乗りかかった船だ、買ってやろうじゃないの、とポチ。

これらの部品は2日後に届いた。早速DACのOPアンプとケーブルを交換、作業は5分で終わった。
サイトには組み込み済みのOPアンプ(ICチップ)の取り外しは毛抜きを使うといい、とあったのでこれを使ったがナルホド、実に簡単にできた。

再度幾つかのジャンルの、聞き慣れている曲を聴いてみた、、、。変化はなかった。(涙)

ボクは再度考えた。音の変化はあるのだが、その変化をそもそも変化として捉えきれない他の要素、特にSP(スピーカー)に問題があるのではないか、、、。
そこで早速リビングにあるONKYOのD212EXという、ブックシェルフタイプとしては割と上級機種のSPを持ってきて接続してみた。

音質は大きく変わった。と言うより、全然別物だ。
リビングで聞くときと同じ爽やかな、音のツブツブがキラキラする感じの、澄み切った音である。ケーブルとOPアンプを交換して聞き比べたが変化はやはりない。

リビングにあるオーディオ・システムに書斎のミニ・スピーカー(KENWOOD:LS−NA7)を繋いでみた。書斎で聞くのと同じ、ちょっとドロッとした音である。
やっぱり今のデスクトップのSPは、あまりにも小型なので無理をしているのだと思った。

ここで友人のTさんの言葉をハッと思い出した。「音を変えたければ、SPを変えること。」。ボクは最初にSPの違いと音の違いについて、実験をやっておくべきだったのである。
しかしケーブルとOPアンプの交換は潜在的マイナス要因を改善したことになるので無駄ではない、、、そう自分に言い聞かせた。

そんな訳で現在ボクは、もう少し大きめで評判のいいデスクトップSPを物色中である。ちょっといいな、と思うものは結構高価で経済的負担を考えると、中々踏ん切りがつきません。キリがないな〜、この世界。